2021年1月の作品展(春の作品展)
学生は、書き初めとして、八つ切りという長い紙に新年の言葉を書いています。
大人は、色紙に禅の言葉を書きました。禅の言葉は心に響く深い意味をもつ言葉が多くあります。各自が書いてみたい字を題材に選んで練習しました。かなの作品は、普段の練習で書いている百人一首や西行の短歌などの中から秀作を選んで掛け軸にしました。
高井麗香
高井麗香の作品
且緩緩
*「しゃかんかん」 そう急がずゆっくり落ち着いて。
且――草書 緩――篆書、隷書
同じ字を繰り返すときは、普通は”々”を使って「且緩々」と書きますが、この作品では書体で変化をつけました。やわらかい篆書でゆったりしている感じを、力強い隷書でどっしりと落ち着いている感じを出しています。
2021年1月の作品展 学生の書
幼児
「まつ」
習い始めてわずかですが、大きな筆を使って元気に書けました。「ま」の最後を三角形を書くように筆を運ぶところが特にうまく書けています。
小学生
小学2年生
「ふじ山」
しっかりとした線で、勢いよく書けました。「山」がどっしりと書けていて特にすばらしい。
小学3年生
「はつ空」
ひらがなはやわらかく、漢字はしっかりと、大きさにも気をつけて全体にバランスよく書いています。
小学4年生
「新しい年」
伸び伸びとした明るい作品に仕上がりました。はらいの筆づかいが美しく書けています。
小学5年生
「平和の光」
きちんとした字形がとれ、すっきりと書けています。ひらがなを少し小さめにしてバランスのいい作品になりました。
小学5年生
「広い世界」
力強い線質で勢いよく書けました。特に「界」はたて長でバランスをとりにくい字ですが、大変上手に書けました。
小学6年生
「正月初夢」
一画一画をしっかりとていねいに書けています。字形にも気をくばって,
まとまった作品になりました。
小学6年生
「四海太平」
力強い明るい作品です。横長の「四」、たて長の「平」などバランスのとりにくい4文字でしたが、うまくまとめました。
小学6年生
「春光百花」
きれいな線で書けました。中心を意識して、きちんと書けています。たて画を太めに横画を細めにかけていて、リズム感もあります。
中学生
中学1年生
「江山春色」
「川や山が春めいてきた」という意味です。行書で書きました。ゆったりとした線質で、力強く書けています。
中学2年生
「白雪新春」
行書で書きました。中心を意識して、伸び伸びとした明るい作品が仕上がりました。
中学3年
「野花如雪」
「野の花雪のごとし」
「如」が横長の字なので、バランスがとりにくい課題でしたが、うまくまとめました。すっきりとした線できれいに仕上げています。
中学3年
「竹声松影」
「風が吹いて竹が響き、月に照らされて松に影ができる」という美しい自然の風景を表した言葉です。しっかりとした線で一文字一文字をきちんと書いています。
高校生
高校1年生
「山紫水明」(さんしすいめい)
「日の光で山は紫にかすみ、川は澄みきっている美しい自然の風景」
画数が異なる字の組み合わせですが、バランスよくまとめました。線のやわらかさが生きた明るくきれいな作品です。
高校1年生
「明鏡止水」(めいきょうしすい)
「一点の曇りもない鏡と止まって静かな水のことから、邪念がなく澄みきって落ち着いた心」
伸び伸びとした線質で力強く、しっかりと書けています。行書を自分のものにして書けています。
大人の書
「門前やこどもの作る雪解川」
*もんぜんやこども(裳)のつ(川)る(累)ゆ(遊)きげがは
小林一茶の俳句
「雪解」は多くの俳句によまれている言葉です。春の訪れをと子供の元気な声が伝わるような句です。
「幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく」
*幾山河越えさり行か(可)は(八)寂しさ(佐)の
終てな(奈)む(無)国そ今日も旅ゆく
若山牧水の短歌
これから先いったいいくつの山や川を越えたら寂しさが尽き果てるような国に至るのか。その思いを胸に今日も旅を続ける。
「物思はぬ野辺の草木の葉にだにも秋のゆふべは露ぞおきける」
*も(毛)のもは(者)ぬ野辺の(乃)草木の(能)葉に(二)た(多)に(尓)も秋の(農)ゆふへは(八)露そ(曾)お(於)き(支)け(希)る(流)
源実朝の短歌
何も思わない野辺の草木の葉にさえ秋の夕べになると露が置かれる。
「春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ」
*は(者)る(流)のよの(能)ゆめ(免)はか(可)りなるた(多)ま(万)くらに(二)か(可)ひなく(久)た(太)ゝむな(那)こそ(楚)
をしけ(遣)れ
百人一首 周防内侍
春の夜のうたた寝にあなたの腕を枕としたばかりに、浮名が立ちでもしたら口惜しいです。
「奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声きくときぞ秋はかなしき」
*奥山に(尓)紅葉ふみ(三)わけ(个)鳴くみ(九)鹿の聲きく(久)とき(支)そ(曾)秋は悲しき(幾)
百人一首 猿丸太夫
紅葉を踏み分けて奥山へ帰ってゆく牡鹿の声を聞くとき、秋はわけても物悲しい思いがする。
「住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ」
*住の江の(能)岸によ(与)る波よ(餘)るさへや夢の(乃)通ひ路人目よくらむ
百人一首 藤原敏行
住みの江の岸による波のようにあなたの傍に寄りたいのに、夢の中の通い路さえ人目をはばかるのだろうか。
「秋の田のかりほの庵のとまをあらみわがころも手は露にぬれつつ」
*秋の田の(濃)かりほの(乃)庵の(能)とまをあ(安)らみ(三)わか(可)ころも手は(八)露に(二)ぬれつ(川)
百人一首 天智天皇
秋の田の仮小屋は苫ぶきの目もあらくつくられているので、私の袖は夜露に濡れ通しだ。
「足びきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ」
*足ひ(比)きの山鳥の(能)尾の(乃)し(志)た(多)り(利)尾の(農)なかゝゝし夜をひ(悲)とりか(可)もねむ(無)
百人一首 柿本人麻呂
山鳥のしだり尾のように長々しい夜を今宵はひとり寂しく寝るほかはないのか。
「道の辺の小野の夕霧たちかへり見てこそゆかめ秋萩の花」
*みちの(能)への(乃)を(越)のゝゆふきりたち(知)か(可)へ(遍)り(里)
み(美)てこそ(曾)ゆ(遊)かめ(免)あき(支)は(波)き(幾)のは(者)な(那)
源実朝の短歌
道の辺の小さな野原の夕霧の中、引き返して見ていこう、秋萩の花を。
「夢」
*世の中すべてのものははかない夢のようなものである。
楷書で書きました。ゆったりとした線質で勢いもあり、明るい作品に仕上がっています。右上の落款は「関防印」といい、好きな句や心境を表す語などを使います。これは「洗心」と彫られています。
「久遠」
*「くおん」 長く久しいこと。永遠
やわらかい線で行書の良さが生かされた作品です。字の大小をつけてリズム感があります。「遠」のしんにょうが伸び伸びしていて特によい。
「至道」
*「しどう」 悟りや真理に達する道。
力強く、しっかりとした線質で書かれています。文字の意味と書が一致しているイメージの作品です。
「妙玄」
*「みょうげん」 奥深くすぐれていること。
力強さと行書のやわらかさの両方が生きている作品です。細かいところまで気を配り、字の大きさ、配置もとてもよくまとまっています。
「雲水」
*「うんすい」 雲が定めなく行き、水が流れるように一所にとどまらない自由な境地。
草書の作品です。流れるような線で書かれています。ゆったりとした雰囲気が出ていて、自由な境地を表す言葉の意味とよく合っています。
「無功徳」
*「むくどく」 見返りを求めて善行を行ってはいけない。
字の大きさに変化をつけ、まとまった作品になりました。「無」の草書は形がとりにくいのですが、とてもきれいな字形となっています。
「夢」
*世の中すべてのものははかない夢のようなものである。
草書の「夢」という字は流れが良く多くの方が憧れる題材です。一気に書きますので、線が単調にならないように変化をつけることが大切です。渇筆(かすれ)が生きた作品になりました。
「一期一会」
*「いちごいちえ」 一生に一度しか会えない人と思って、その出会いを大切にする。
草書で書きました。流れよく伸び伸びと書かれています。「期」や「会」は草書体ではなかなか読めませんが、その分やわらかい雰囲気を味わえると思います。
「行雲流水」
*「こううんりゅうすい」 空を行く雲、川を流れる水のごとく、物事に執着せず自由な心で生きていく。
草書体のゆったりとした雰囲気が生かされたきれいな作品です。特に「行」の流れと字形が美しい。
「我逢人」
*「がほうじん」 人と会うことからすべてが始まる。
力強さがある作品に仕上がりました。「逢」を大きくゆったりと書き、続けて「人」を横長にしてうまくまとめました。
「妙趣」
*「みょうしゅ」 すばらしい味わい、おもむき。
草書の流れの良いきれいな作品です。特に「趣」は伸びやかで字形もまとまっています。
「千里同風」
*「せんりどうふう」 どんなに遠く離れていても心はひとつ。
4文字がきれいにおさまり、流れよく書けています。潤筆、渇筆もきれいに出て、動きのある作品です。
「慈眼」
*「じがん」 やさしい思いやりの眼をもって接する。
勢いがあるゆったりとした作品です。字形のとりにくい2文字でしたが、うまくまとまりました。
「看脚下」
*「かんきゃっか」 自分の足元を見よ。
草書の良さのあるきれいな作品です。字の大小もバランスよく、流れも美しく書かれています。
「百雑砕」
*「ひゃくざっすい」 煩悩や妄想、執着一切を木端微塵に打ち砕いてしまいなさい。
3文字がバランスよくきれいに書けました。線質もやわらかく、流れの良い作品です。関防印は「知足」(足るを知る)です。
「不識」
*「ふしき」 しらない、わからない。ものの良し悪しを分別する自我を諭す言葉。
流れの良いきれいな作品です。「識」は形のとれない字体ですが、まとまって書けました。